2017年07月14日
私はある経済紙で統計データをチャートやマップにデザインする仕事を行っています。
情報可視化、インフォメーションデザインなどと呼ばれる分野です。
そこでは集められたデータを表計算ソフトなどを使用して、表やグラフなどのチャートにしていきます。こういったアプリケーションソフトから加工されたチャートは、必要な情報が全て含まれているにもかかわらず、どこかわかりにくく読み解くのに時間がかかるモノばかりだったため、私は始め出来上がったモノにどこかモヤモヤした気持ちを抱いていました。
そんなモヤモヤが何か気づいたのが、アメリカの認知科学者、ドナルド・ノーマンの著書『誰のためのデザイン?』を読んでいた時でした。
本書の冒頭にドアに関する記述が出てきます。
人はドアの開け閉めをどうやって理解しているのか?
そしてなぜ引いて開けるドアをつい押してしまったりするのか・・?
確かにはじめて開けるドアはもちろん、何回も開けるのに失敗してしまうドアが私にもいくつかありました。
もちろんドアに「押す」「引く」とちゃんと書いてあれば、問題なく開けられますが、言葉がわからない外国の場合はそれでも間違えてしまいます。
ですが押して失敗しても、次に引いてみればドアは開いてしまうので、このような失敗は正直すぐに忘れて、あまり気には止めていませんでした。また何度も失敗した場合は自分は物覚えが悪いな、と単純に思っていました。
しかしノーマンはそもそも引いて開けるドアならば、押すことができないようなカタチ(デザイン)であるべきだと主張しています。
例えば押すことだけしかできないドア、というのはスーパーのバックヤードや病院などにある取っ手のない扉です。こうすると人は前にしか力をかけられないので押すことだけ可能になります。
ノーマンのドアに関しては下記の記事が動画をもとにわかりやすく書かれています。
表計算ソフトのチャートに感じていたモヤモヤとは、データが間違っていないのに頭に入ってこない、つまりこのデータが表す経済用語や背景などをちゃんと理解していないからだ、と読み解けない自分に問題があると思っていたからでした。
しかしわかりにくいというチャート自体に問題があるのではないかと見方を変えることにしました。
そういった経験からもっとデザインを用いて情報を伝わりやすいカタチにしていくにはどういうことが必要なのかを調べ始めました。
そしてノーマンのドアや私の仕事に限らずこのような出来事は普段の生活で無数に起こっていることだとも感じました。
情報はもはや誰でも手軽に発信できる時代です。
ですからデザイナーに限らず、多くの人がこういった場面に出くわすのではないでしょうか。
ドアの情報、統計チャートの情報はメッセージとしてユーザーに伝わります。こういったメッセージを伝える側の時、私たちは何に気をつければよいのでしょうか?
シンプルに伝えるためにはどういった考え方で、カタチにしていけばよいのでしょうか?
また、その見せ方はどのようにしたら効果的でしょうか?
そういったことを考えていくために
このウェブサイトをスタートさせました。
モノとヒトがつながることで
その先の
ヒトとヒトがつながりやすくなるこの先のために
これが 2-Space の出発点です。
Toshiya Inoue