2017年09月04日
普段何気なく使っているグラフも
正しく使わないと見る側の人に誤解を招かせたり
返って混乱させてしまったりして逆効果になることがあります。
作成者がデータの扱いをちゃんと理解し、表現を(本当に少しだけ)整えてあげるだけでそういった誤解はかなり減らせるはずです。
ではつくる側はどんなことを意識すればよいでしょうか?
このテーマで何回かに分けて
つながるグラフのつくり方
をアップしていきます。
第1回目は折れ線グラフです。
今回のつくり方ではグラフ作成時に参考にしている書籍の中から
"ウォールストリート・ジャーナル式図解表現のルール"(*1)(以下"WSJ図解")
を基に折れ線グラフの特徴から気をつけるポイントまでを良い例と悪い例を比較しながらまとめました。
著者のDona Wongはウォールストリート・ジャーナルでグラフィックディレクターとして活躍された方でデータビジュアル化の第一人者です。
ウォールストリート・ジャーナルのディレクターというとさぞ難しい専門用語などで説明されているのではと思うかもしれませんが、そういったことはまったくありません。
丁寧に図解表現の基礎が書かれているので、これから勉強する人のはじめの1冊を選ぶとしたらこの書籍をおすすめしたいです。
特に悪いグラフ(誤解を招きやすいグラフ)はどうしてそう見えるのかといった理由がちゃんと説明されているので、今まであやふやだったり意外と誰も知らなかったりすることがこの本から理解できると思います。ウォールストリート・ジャーナルで既に実践されているという安心感もありますね。
折れ線グラフは連続した変化の傾向がわかりやすいグラフです。
ですから横軸の大半は 時間 が用いられ時間軸に沿って変化していく値が表されます。
株価や為替、指数などの推移を表す場合には折れ線グラフにするのが最もポピュラーな方法です。
統計局のウェブサイト(*2)では折れ線グラフを
"折れ線グラフは、横軸に年や月といった時間を、縦軸にデータ量をとり、それぞれのデータを折れ線で結んだグラフです。線が右上がりならその期間はデータが増加(上昇)、右下がりならデータが減少(下降)していることになるので、データの増減を見るのに適しています"
と説明しています。
つまり折れ線グラフを用いる時は、横軸は時間軸(年、月、日)に設定しておくことが大事です。
折れ線の変化がわかりやすい理由は線に高低差があるからです。
ということは平べったい折れ線は動きがわかりにくく、グラフの長所を消してしまっていると言えます。
作成した時に平べったくなってしまったら、縦軸の目盛りを調節してあげます。具体的には最低値と最高値の値を近づけてあげます。
またこの際に自然な目盛間隔にしてあげることも大事です。
図(左)を見てみましょう。
これでは線の動きがわかりにくく150の目盛を前後しているくらいにしか印象に残らないと思います。
これの縦軸の目盛りを調整したのが右側のグラフです。
目盛りは縦軸(最低値/最高値)を (0/300) => (100/220)に変更しました。間隔は20に設定しています。
目盛りは
0, 1, 2, 3... / 0, 5, 10, 15... / 0, 2, 4, 6...
などは読み取りやすいですが
0, 4, 8, 12... / 0, 7, 14, 21... / 0, 12, 24, 36...
などは前述と比べると不自然に見えます。
特別なことがない限りこういった間隔をつけるのは避けたいです。
またここで一つ大事なことは、折れ線グラフに関しては縦軸の目盛が必ずしも
0から始まる必要はない
ということです。
折れ線の変化がわかりやすいのが重要ですので修正後は縦軸の最低値を
(0) => (100)に設定しています。
0が必要なのは棒グラフです。
逆にあまりにも上下に激しく動く折れ線も調整してあげる必要があります。方法は先ほどとは逆に縦軸目盛の最小値、最大値を広げてあげます。
WSJ図解では折れ線は全体の3分の2の高さが適切だと言っています。つまりグラフの上下3分の1は余白として残したほうがバランスがよくなり、読み取りやすくなります。
エクセル等の表計算ソフトから折れ線グラフを作ると、デフォルトでは線が細くなる傾向にあります。
これを太くしてあげるだけでもかなり印象が変わります。
図(左)では折れ線が背景の目盛線の太さとほとんど変わらず、同化してしまって読み取りづらいため、線を太く調整しました。
よく凡例を使い、折れ線と対応付けているグラフがありますが、基本的に説明は折れ線の近くにつけます。
線と説明が離れていると、それぞれを探して対応付けるため目線が行ったり来たりしてグラフに集中できませんし、余計な作業も増えてしまします。
グラフに直接つけるほうが、別スペースに説明を表示する手間も誤解も減らすことができます。
またなるべく最新の値の近くに付けてあげることで、そのまま現在の順位が直感的に伝わります。
凡例は、スペースが限られていてどうしても折れ線の近くに付けられない時にだけ使いましょう。
図(左)のようにたくさんの折れ線を一つのグラフに表示させていることがありますが、その中から各線の動きを読み取るのは骨の折れる作業です。
こういったグラフをわかりやすくする一つの案は各グラフをそれぞれ別のグラフとして分けてあげることです。
分けるときはそれぞれのグラフの大きさを同じにしてください。
各線の動きを見せたいときはスペースの許す限り分けることを考えてみましょう。
複数のグラフを比較する場合、目盛りのつけ方に注意する必要があります。
図(左)はそれぞれ目盛間隔が500となっていて、一見正しく比較しているように見えますが、増加した割合を見ると
A(2,000 => 4,000)の2倍
B(10,000 => 12,000)の1.2倍
と差があるのに線の動きは全く同じです。
比較をする場合これでは誤解を招きやすくなります。
調整後(右図)はAの縦軸目盛の比率(2,000 => 4,000)にB(10,000 => 20,000)を合わせたものです。
こうすることでグラフの傾きで直感的に比較できるようになります。
以上、つながるグラフのつくり方 / 折れ線グラフ編その1でした。
ここで紹介したものは、難しいテクニックなど必要ないものばかりだったと思います。
こういったことを意識するだけでも、理解されやすさがぐっとアップしますのでぜひ実践してみてください。
次回は棒グラフ編をアップしたいと思います。
参考書籍
*1 "ウォールストリート・ジャーナル式図解表現のルール" / amazon.jp
参考サイト
*2 なるほど統計学園 / 統計局