2017年10月15日
更新日 2022年09月23日
普段何気なく使っているグラフも
正しく使わないと見る側の人に誤解を招かせたり
かえって混乱させてしまったりして逆効果になることがあります。
作成者がデータの扱いをちゃんと理解し、表現を(本当に少しだけ)整えてあげるだけでそういった誤解はかなり減らせるはずです。
つながるグラフのつくり方
第2回の今回は棒グラフです。
前回同様"ウォールストリート・ジャーナル式図解表現のルール"(*1)(以下"WSJ図解")を参考に棒グラフ作成時に気をつけて欲しいポイントをまとめました。
棒グラフは各データ量について1本の柱を使って表すグラフです。
縦棒グラフの場合、縦軸は、”量”を表す単位 が扱え、横軸は比較したい項目を並べたり、折れ線グラフのように時系列を用いたりすることもできます。また、グラフの中で最もシンプルな図表であるため読み手にとっても理解しやすいグラフです。
統計局のウェブサイト(*2)では棒グラフを
"棒グラフは、縦軸にデータ量をとり、棒の高さでデータの大小を表したグラフです。(稀に縦横が逆の場合もあります。)
データの大小が、棒の高低で表されるので、データの大小を比較するのに適しています。"
と説明しています。
作成者の皆さんも比較的簡単にイメージ通りに作れるため、最も頻繁にグラフ化しているのではないでしょうか?
ただ簡単で作りやすいからこそ見落としがちなポイントもあります。早速見ていきましょう。
当たり前ですが、棒グラフの主役は縦または横に伸びる柱そのものです。ですからこの柱が細いとバランスが悪く、項目に対する印象も変わってしまいます。
図(左)は柱がとても細くなんだかひ弱な印象です。
WSJ図解(p63)では棒の面積を
"縦棒グラフの太さは、柱と柱の間の余白の2倍程度が適正"
と表現しています。
図(右)は、おおよそそれに従って修正したものです。
このグラフが、企業や国の業績を表すグラフだとすれば太くどっしりとしている柱の方がより図表に説得力が出てきます。
棒グラフを作るとき、これだけは守ってほしいというのがこの項目です。
図(左)を見てください。
パッと見るとD社が他社に比べ高い数値を示しています。特にA社やC社との差は顕著です。
そしてC社の値はほんのわずかな印象を受けます。
しかしこのグラフは0(ゼロ)から始まっていないため通常より歪んだ印象を与えています。
このグラフの何がいけないのでしょうか?
0がないからといってDがトップであることに変わりはありませんし、数値自体も誤っていません。
確かにそうなのですが、ここで大事なのはやはり読み手への印象です。
棒グラフはその性質で記したように、量を意識したグラフなので0から積み上げられているという印象を読み手は持ちます。そしてその0の位置は、柱の底辺のはずだと誰もが無意識に感じています。
そこにこのような途中から始まるグラフがあると、読み手は自分で見えない部分を保管しなければいけません。
WSJ図解でDona Wongは
"このようなグラフは、「ひと目で簡単に内容を伝える」という図解本来の目的に反しています。"
と言及(p64)しています。
また0から始まっていないことに気づいた読み手の心理として、インフォメーションデザイナーである桐山岳寛氏はその著書"説明がなくても伝わる 図解の教科書"(*3)の中で
"受け手に不正確な認識を与えるだけでなく、「危うく騙されそうになった!」という不信感を覚えさせるだけの結果に終わりやすいので気をつけよう。"
と表現(p124)しています
このようなグラフに作成者の悪意がなくても、読み手の印象を変えてしまいますし、もしそれに気づいてしまったら桐山氏の言うように返って不信感を与えてしまいます。もしかしたら他のデータ図でさえ信ぴょう性を疑ってしまうかもしれません。
調整図(右)では0から積み上げた各会社の値が見て取れます。ちなみに0(ゼロ)の線は他の補助線よりも若干太く、濃くしてあげた方がバランスがいいです。
もしここで各社の差がわかりにくく、もっと差を強調したグラフを作りたい場合は他の値を使って表せないかを検討してみましょう。例えば、変化量や変化の割合(パーセンテージ)をグラフにした方が良い場合もあります。
多くの場合、1つのテーマ(年間売上高、販売数など)に即したグラフを作成されると思います。その場合項目にそれぞれ違う装飾を施す必要はありません。
これは大げさですが、図(左)のような過度な装飾は返って読み手を混乱させるだけです。
また、エクセルなどのグラフ作成ソフトでは立体表現も簡単に作成できます。ですがこれも混乱の元です。
図(左)ではいったいどこがグラフの頂点なのかわかりません。
装飾も、3D表現もデータを読み解くことに関しては足かせになることがほとんどです。
グラフ自体はシンプルでなんの変哲もないもので構いません。
読み手に素早く一目でわかってもらえることを第一に目指しましょう。
これまでは1つの柱に1つの項目でしたが、今回は複数の柱を1つの項目に合わせて比較する場合です。
図(左)をみてみましょう、対照的な色を使いすぎていて各データを読み取るのに目が疲れてしまいます。
修正後(右)では色相を1つにして、明るさの違いでそれぞれを分けています。明るさの違いなら白黒印刷でも判別できます。
また、並べる順も明るい色から暗い色へ順に並べていくことで自然と読み手に左から右へと視線を誘導させています。
続いて項目や凡例の表示の仕方です。
図(左)のように各項目が斜めになっていると読みにくいです。
グラフ作成ソフトでは項目の文字量が長いと斜めで出てくることが多いですが、改行、文字詰めなどをうまく使って調整しましょう。
また左下にある凡例も位置、順番共に修正が必要です。
修正図(右)では項目を文字詰め、改行で横書きに整えています。
凡例も見やすいスペースに、柱と同じ順番(2015 => 2016 => 2017)で表示しています。
すべてのグラフでそうですが、凡例は読み手がスムーズに理解できるようにグラフとの配置関係を合わせましょう。
グラフに入れた項目のうち、1つだけ抜きに出ていたり、その年だけ例外的な値を持っていたりすると、目立ちすぎて本来見てほしい項目の印象が薄くなってしまうことがあります。
図(左)はまさにそのようなグラフで、'D'社の値が目立ちすぎてしまっています。このような時は、目盛りの省略を行ってもいい場合があります。
図(右)は始めに'D'社を覗いたその他の会社の比較しやすい目盛り間隔(ここでは1,000刻みで最大値5,000に)で作成し、その後'D'社を省略していることがわかるような表現で間に加えました。
また、このような修正は条件によってはやらない方がいい場合もあります。
WSJ図解では
などの場合は省略表現はしない方がよいと言っています。
以上、つながるグラフのつくり方(2) / 棒グラフ編その1でした。
棒グラフの中でも今回は最もポピュラーな縦棒グラフに絞って書いてみました。どれも作成者の皆さんにはぜひ意識して欲しいところです。ぜひ参考にしてみてください。
参考書籍
*1 "ウォールストリート・ジャーナル式図解表現のルール" / amazon.jp
*3 "説明がなくても伝わる 図解の教科書" / amazon.jp
参考サイト
*2 なるほど統計学園 / 統計局